おおつるレポート(2002年)

経営者が守らなければならない指標

情報ネットワーク2002年12月表紙より

 経営をしていく上で経営者が守らなければならない経営指標が会社経営には存在します。特に中小企業の場合は、キャッシュフロー(現預金)と売上の関係や売掛金を売上の何%までに抑えることと人件費対粗利益比率がより重要な感じがします。
 具体的には売上至上主義的行動をおこし、売上が増えていても、売掛金や受取手形が増えるだけで現預金が全然増えていない場合や、もっと悪い場合は支払の方が先に現金で支払われ、手許現金がますます少なくなっていく場合があります。
 健全な企業経営をしていくためには、売掛金の残高を管理して、できればキャッシュフロー対売上比率が10%以上はほしいものです。又人件費対粗利益比率を意識して適正給与(適正人員)を把握していくことは会社経営にとって大事なことです。
 これからの時代は売上至上主義ではなく、経営者がこのような基本的な指標を意識しておこなう時代に突入したような気がしてなりません。

税理士 大津留廣和

大きく変化する経済

情報ネットワーク2002年11月表紙より

 経済は常に変化する。5年前、10年前の状況と現在を比べてみれば、その変化の大きさを改めて認識することができるだろう。
 これだけ大きく変化する経済に対して、私たちはどのように対応したらよいのだろうか。一見矛盾するように思われる二つの姿勢が大切で一あると思う。
 一つは、変化を素直に受け入れて、日々の経済がどのように変わっているのか敏感に感じ取り、その変化に関心を待ち続けるということである。
 もう一つの重要な姿勢は「変化に惑わされぬ見方」を確保することだ。刻々と変化する経済の動きを追っていくことは大切だが、その変化を捉える視点が大きく動いてはいけない。変化の本質を見る目を育でなくてはいけない。(伊藤元重の日本経済がわかるキーワードより引用)
 何も考えずにただ、人より多く努力すれば報われるとか、儲けることができる時代は終わった感じがします。それゆえ経営者の仕事はグランドデザインを描き、新規のお客様を拡大することと今取引をしているお客様に満足を与えることの活動を地道にしつつ、会社のキャッシュフローの充実に努めることです。
 上記の2つの視点(1.変化を素直に受け入れる 2.変化の本質を見る)を意識しましょう。
 そうすることにより私たちは大きく変化する時代をチャンスにできる可能性が強くなります。

税理士 大津留廣和

勝つことを考える

情報ネットワーク2002年10月表紙より

 中小企業経営者にとって経営がうまくいっている(「事業で勝つ」)とは何を持って測られるのかを一度考えてみましょう。
今までの日本はもしかしたら、「シェア」や「売上」を戦略として目標に据えていた感じがしてなりません。その為にどちらかというと「いけいけドンドン方式」経営をやってきたし、又それが成功の要因だったことも否定できません。
でも現在は世の中の状況がガラリと変わりました。もう一度戦略(誰と戦っているのか、どういうことができた段階で勝ったと言えるのか)をきちんと考え直す必要があります。そういう事をしないで経営をしていくと、現場が売上至上主義に陥ったり、面倒な仕事を敬遠したり、すぐ結果がでない仕事を大事にすることを止めたりして、現場がめちゃくちゃになってしまいます。我が社のオンリーワンの商品、サービスは何かを明確に見据え、何を持って我が社は「勝つ」のかを考えたいものです。

税理士 大津留廣和

人の良い社長は本当の良い経営者か

情報ネットワーク2002年9月表紙より

 儲かっている中小企業の社長さんと儲かっていない中小企業の社長さんを見ていると、何かが違う感じがします。
 どちらの社長さんも朝から晩まで一生懸命働いています。
 しかしがんばっている仕事の中身が違う感じがします。
 従業員さんの仕事が忙しいときに社長もいっしょになって働く人の良い社長の方が中小企業の社長さんには多い感じがしますが、一般的にはそのような会社は儲かっていない会社の方が多い傾向が見られます。
 そのような現実を見ていると、社長の仕事は一体何なのかということを考えさせられます。社長ももしかしたら、従業員さんといっしょに働いていて「一見良い社長」だと自己満足しているのかもしれません。
 でも今のような時代それでいいのでしょうか。
 社長の仕事は、絶えずいま起こっている問題点や将来のことを考え、これからどうするかを検討し行動することです。そして毎日の仕事の中で「社長でなければできない仕事」を一つでも多く見つけて、行動していくしとだと思います。
 従業員の仕事を手伝う時間はないし、またそういう時間をつくってしまっていてはいけないのかもしれません。
私達中小企業の社長は日常業務の中で従業員さんといっしょになって働かなければならないしとが多い現実がありますが、「社長でなければできない仕事」を考え続けて、行動し、一人当たりの付加価値を上げることを目標に経営していきたいものです。

税理士 大津留廣和

考え方や物事に対する姿勢

情報ネットワーク2002年8月表紙より

 事業で成功する人とそうでない人とはもしかしたら能力的にはあまり差がないのかもしれません。違うのは「考え方や物事に対する姿勢」なのだと思います。
 経営者が来年度の予算を立てる時、今年度の実績の延長線上で考える人は今ひとつ元気がない感じがします。それに対し将来の5年後を見据え、我が社はこうなるとゴールを決め、そのために今年始めるべき必要なことの計画を立て、一歩一歩確実に進んでいる素直な経営者は元気があります。
 今の時代、今年の延長線上で計画を立てようとしても、世の中の情勢、取引先企業の経済状態など不確定要素の多いことから、どうしても弱気になります。ゆえに5年後のあるべき姿を描き、それゆえ今年やるべきことから手をつけようと計画することです。
 そのためには会社内においては、PLAN(経営計画)、DO(計画実行)、SEE(月次決算で確認)、CHECK(実績検討)、ACTION(調整・行動)という企業の管理サイクルを作ることです。
 そして将来を見据え、確実にやるべき基本的なことを繰り返しやり続けることにより世の中から信用を得ることが成功する秘訣かもしれません。

税理士 大津留廣和

自分自身を見つめてみましょう

情報ネットワーク2002年7月表紙より

 会社の業績が良い会社と会社の業績が悪い会社とが一段と選別されるようになってきました。
 又異業種交流会などの経営者の会合や講演会に出席してみても、うまく活動が続いている会と、出席者が愚痴ばかり言う会に分かれてきた感じがします。
 業績の良い会社の社長を見ていると、他人や他社と比較するのではなく、自分自身と競争している感じがします。
 業績の悪い会社の社長は業績の悪い原因を景気のせいや従業員や取引先のせいにするのに対して、業績の良い会社の社長は自分自身を成長させる為に挑戦し続けています。
 自己中心的で批判ばかりしている人は知らないうちに人を遠ざけ、いつのまにか孤立し、相談する相手を自ら少なくしています。
 反対に自分を成長させようとしている人は他人に対してもやさしく、自己中心的ではない為、人が近寄ってきます。
 自分自身を見つめることにより、知らず知らずのうちに自分の仕事のクオリティーが高まっていくのかもしれません。

税理士 大津留廣和

キャッシュフローを上げるために

情報ネットワーク2002年6月表紙より

 経営者には、自社の利益(経常利益)を経営指標として見ている人が多いように思われます。でも本当は'中小企業の経営者はキャッシュフロー(現預金残高等)を経営指標として見たいものです。そうすると企業の経営実態が見え始めます。
 年初にあった現預金残高が、年末にそれ以上になって返ってくるということを毎年毎年、続けていくことが大事なことなのです。
 現在のような売上や利益が伸びない時期には、将来を見据えて貸借対照表のリストラ(バブル時代に取得したゴルフの会員権等の処分)を行い、総資産を見直さないといけません。
 貸借対照表の中の何に問題点があるか、そしてそれをどうするかを検討しなければ、経営計画をたてることはできません。
 そしてキャシュフロー(現預金残高)の増加に努める必要があります。その時一番効果があるのが、売掛債権、買掛債務、棚卸資産、減価償却の項目です。
 これらの項目に注目して、地道に日夜努力・改善を続けていく企業はからなず強くなっていくはずです。
 また利益が出ている会社は、年末の現預金残高が年初の現預金残高よりも多くなっていないといけません。
 この当たり前の事ですが、このような当たり前の事ができている会社が成長するのです。

これからのビジネスチャンスの時代に色々と行動を起したいものです。

税理士 大津留廣和

資産デフレ加速

情報ネットワーク2002年5月表紙より

 全国平均で公示価格がピークを記録した1991年に比べ、住宅地は36.O%下落し、バブル以前の87年の水準となり、商業地は62.0%下落し、80年の水準まで落ち込んだ。(日本経済新聞平成14年3月26日より)

 今回の地価の下落で公示価格は11年連続の下落となった。景気が悪い、失業率が高くなっている等と世間では言われている。でも別の視点から日本経済を見ると、劇的に産業構造の転換が進んでいると見ることができるのかもしれません。過去のしがらみや仕事の手順について気にすることなく、前向きに捕らえられる人や企業にとっては千載一隅のチャンスが目の前にある感じがします。常に社会情勢を見守り、感覚的に捕らえるのではなく、論理的に物事を見たいものです。
 日本経済は円安=金利高という論理的に整合性のある方向に行くのだろうか。異常な低金利がいつまで続くのか。どちらにしても経営者や前向きに捕らえられる人にとっては、いつどういう形で物事が進んで行くのかを考え、行動を輿すことが大事なことだと思います。

税理士 大津留廣和

常に学び続けましょう

情報ネットワーク2002年4月表紙より

 ニュースやテレビから毎日流れるデフレ時代からの脱却、インフレターゲット論や過剰流動性の問題、ペイオフの問題など何かが私たちの生活に影響する感じがひしひしと感じられます。
 10年間の不況の後とあって、目先のことに関心がいって将来のことを考える余裕がないのが現状かも知れません。しかし時代が変わるとき(もしかしたらもう変わってしまったのかもしれませんが)とは、今までの成功のパターン(特に戦後の土地を中心とした成長パターン)でやると失敗する可能性が非常に高いのです。
 ゆえに経営者の皆様も常に学び続けることを通じて先が見え始めると思います。
 私が接している優れた経営者を見ると、皆さん幕末や戦後の時代物の本をよく読んでいる感じがします。このような先がよく見えないときは歴史に返るということかもしれません。
 考え方の前提条件が変わったのなら、我々も歴史に返り、考え方を変えなければいけません。今までの常識で考えることなく、お客様の視点を見据え、色々なことを学び続けている経営者や会社がもの凄い勢いで成長を遂げ始めた感じがしてなりません。

税理士 大津留廣和

大きいことをいって小さいことを始める

情報ネットワーク2002年3月表紙より

 大きなことをいって大きなことをやる。これは起業家がやることではなく、大企業のやること。大きなことをいって今すぐできる小さなことから始める。これが起業家のやることだ。
大きなこと、つまり理想は高く持ち、自分にできることから小さな成功体験を積み重ねていく。今できる小さなことの延長に未来があると考える。
起業家とは今与えられた環境、今自分が持っている力を最大限に活かして、「今」を全力で生きている人のことである。その結果が知らず知らずのうちに、「大きな」ことになっているはずだ。(「アントレプレナーになろう」福島圧伸著ダイヤモンド社より)

 一般的に経営者はどうしても目先の企業業績が悪かったり、試みたことが失敗したりすると落ち込みます。そしてその結果、過去を嘆いて嘆いて時間を過ごす傾向がみられます。
 その結果として「今」を無駄にしてしまいます。
 もし成功したいのなら、よい種をまかなければ(よい試みや挑戦を続けなければ)何も実りません。

  1. 今会社が扱っている商品がどうしてお客様に売れているのか
  2. 今会社が扱っているサービスがどうしてお客様に受け入れてもらえているのか

ということにすべての神経を集中して考えていきましょう。
そしてそのために、未来の成功(実り)に向けて今日どんな試みや挑戦をしたか(種をまいたか)ということが大きな力になっていく感じがしてなりません。

税理士 大津留廣和

時代を見据えて

情報ネットワーク2002年2月表紙より

 日本銀行は平成13年3月19日に「量的金融緩和」に踏み切りました。そしてその結果として、平成13年12月19日に決めた金融緩和策で当座預金の残高目標を「6兆円を上回る」から「10兆~15兆円程度」に引き上げています。
 金額が大きすぎて私達の生活にどう影響するか判断できませんが、一つ考えられることは物凄いお金を市場に出そうとしている感じがしてなりません。
 その結果として、現在のように景気が長期低迷し、デフレ現象が進行している状態は永久に続くことはなく、いずれどこかでお金が動き出し、景気が回復に向かう可能性は高いと思います。
 もしそうであるならば、この不景気の間(冬の間)にしっかり自社を見つめ直す必要があります。厳しい現実を直視することは辛いことですが、現状認識をきちんとしないと先に進みません。会社の経理処理の迅速化を図'人毎月の業績管理を今まで以上に直視しましょう。

 春に花や作物の種を播く時期を間違えることなく、種を播いて、あとはたっぷり時間をかけて作物が実る準備をするためにも。

 どんな企業も一晩で急成長することはありえません。
 やはり3年4年と時間をかけて基盤をつくりながら成長していくものです。
 だからこそ、今のような時代は将来を見据え、我が社の存在意義が間われる志を持った製品やサービスが成長していくのを待つような気持ちを持ち、その製品やサービスを育てていくことが大事な気がします。

税理士 大津留廣和

すなおな気持ちで決断しましょう

情報ネットワーク2002年1月表紙より

 現在の日本においては、工業社会(モノを売って稼ぐ社会)からサービス社会(知識=ノウハウやアイデアを提供して稼ぐ社会)への転換(産業革命をも上回る大改革)がおこっています。
 その為に企業業績が上がらなくて、経営が行き詰まってきている会社が増えてきていますが、ドラッカーは行き詰まった時には思い切って変身することが必要だと言っています。発展を続けていくためには、絶えざる「創造的破壊」が必要であると。
 今日よりもよい明日を築くためには過去に適用してきた考え方や方法を絶えず見直して破壊することが必要なのです。(ドラッカーと福沢諭吉より)

 それ故に私達は心の中にある過去の成功体験や自分を良く見せようと思う気持ち、こだわり、わだかまりなどを整理しなければいけません。私達自身が持っている基準、メンツ、好み、人から良く見られたいと思う気持ち等を優先する今の快適な状態を守りたいと思う心を一度見つめてみましょう。
そういう気持ちがあると何か行動をおこそうとすると、今持っている実力以上に人に見せようとして、かっこつけて振舞おうとするため、ボロが生じるかもしれないと思う恐怖心が出て来て決断ができません。この恐怖心を一度きちんと見つめ整理する必要が出てきました。私達にとって過去の成功体験からくる都合の良い状態が崩れてしまうかもしれないという心境を整理したいものです。
 心境を整理するとは自分の心の中にある基準、メンツを守る気持ち、好みを優先する気持ちやエゴなどがない状態を意識し続けることだろうと思います。
 今私達経営者や会社ができることを真剣に行うことが大事であり、大きく見せようとしたり、必要以上に卑下する必要もありません。
 すなおな気持ちで決断すればいいのです。

税理士 大津留廣和