おおつるレポート(2003年)

リレーションシップバンキングとは

情報ネットワーク2003年12月表紙より

 一般的には「金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することにより顧客に関する情報を備蓄し、この情報を基に貸出等の金融サービスの提供を行うことで展開するビジネスモデル」とされています。

 もう少しわかりやすく言うと、金融機関の方が中小企業の経営者や実態を今まで以上に把握し、中小企業の成長発展を願って、土地担保主義による融資からの脱却を始めたということだと思います。それゆえに我々中小企業の経営者は今後はキャッシュフロー経営を目指せということだと思います。経営者の仕事は、大事な意思決定や決断をすることができるかどうかです。

 時代がまさに変わりました。売上高が伸びたとか減ったとかも大事なことですが、総資産と経常利益の比率とか、総資産とキャッシュフローの比率とか、自分の会社の基準をきちんと経営者が理解し、この中に自分の会社がおさまっているかどうかを検討し実行することが経営者に求められています。

バブル時代の不良資産やバブル時代に身についた考え方を一度捨て去り、原点に返り、自社の都合からではなく、お客様の視点に立ち、お客様といっしょになって役立つポイントを探し続けることが求められています。

税理士 大津留廣和

マネーについて

情報ネットワーク2003年11月表紙より

 世の中が動いている感じが最近ひしひしと伝わってきます。
 日経ダウは7,607円88銭(平成15年4月28日)の最安値から目先の高値11,033円32銭(平成15年9月18日)へと短期間に45%も値上がりしました。
円相場(ドル)は平成15年9月30日には2年10ヶ月ぶりに1ドル110円台まで上昇しました。新発10年国債利回りは平成15年6月13日に0.435%で底を打ってから平成15年9月9日にはこれも短期間に1.600%まで金利が上昇しました。
 土地についてはバブル崩壊後まだ下がり続けています。銀行の1年ものの定期預金の金利は0.03%です。大手銀行の株価、特にUFJの株価は平成13年5月には979,000円あったものが、平成15年4月には最安値85,200円へ急降下で下がって行き、その後今度は値上がり続け平成15年9月22日には498,000円へと短期間に5.84倍も値上がりしました。また日本銀行は平成15年9月30日、金融機関が自由に使える手元資金の量を示す当座預金残高を過去最高となる34兆6千億程度に増やしました。このようなお金の動きを見ていると、どう考えても世の中のお金がおかしな動きをし始めたと考えざるを得ません(私見ですが)。お金は人間が発明したすばらしいものです。
 このお金についてどう考え、どう行動するかは個人にとっても、法人にとっても大事な間題です。お金と真正面から見つめて行動する時期が近づいているのかもしれません。

税理士 大津留廣和

経営の心得

情報ネットワーク2003年10月表紙より

 私自身、職業柄色々な企業に訪問させていただいて気づくことがあります。
 それは従業員さんに経営者の考え方がきちんと伝わり、従業員さんが急に成長したなと感じる時です。人は夫婦でもなかなかな思うようには動いてくれないのが当たり前なのですから、そこの従業員さんが社長の考えを理解し、動いているということがどんなに凄いことかと思います。
短期間に従業員を成長させている経営者からお聞きしたことですが、人を成長させるにはその人が仕事ができないことや、仕事が遅いことを怒るのではなく、怒る代わりに同じ仕事を繰り返しさせることだそうです。そしてその仕事が完壁にできるようになったら、また次の仕事をしてもらうのがコツだそうです。
 中小企業の場合だと手取り足取りで、従業員の訓練を行う時間がありません。足手まといになる人間を雇う余裕もありません。それで従業員さんに同じ仕事をしてもらっている間に、注意して見守ることは、仕事に取り組む姿勢や工夫の有無、上昇志向の有無です。これがある人は間違いなく成長します。
経営者は我慢強さを身につけ、しっかりした人を育てることが本当の仕事だと痛感させられました。

税理士 大津留廣和

知識社会への対応

情報ネットワーク2003年9月表紙より

 2003年路線価(土地の価格)は11年連続で下落し、みんなで不況だ不況だと言っています。
 経済学者のピーター・ドラッカー教授は、「今は不況が起きているのはなく、工業社会から知識社会への転換が起こっているのだ」と言っています。ほとんどの業界において、今供給力が需要を超えたため、過去の経験や常識が通用しないことが多くなってきました。
時代が大きく変わり始めています。早く売り手中心の考え方から買い手中心の考え方へ社長の考え方を変えることが必要です。
 それゆえに売り上げ目標を対前年比何%UPという経営計画を作っても意味の
ないことを感じはじめています。環境が変わっているので、固定概念にとらわれることなく、ひとつひとつのプロジェクトごとにまずやってみて、売り上げと利益の管理をすることが大切な気がします。 知識社会へ対応するため、お客様の声に耳を傾け、お客様と対話し続け、お客様の智慧に学び続けること、すなわち、お客様の立場に立って考えることがビジネス成功の基本になる気がします。

税理士 大津留廣和

バランスシートの重要性

情報ネットワーク2003年8月表紙より

 土地の価格の下落(資産デフレ)が続く中で、経営者や個人にとって経営をしていく上、資産を防衛する上で、バランスシート(貸借対照表)をきちんと作り、確認することがとっても大事なことです。
 個人で10年前に住宅ローンを組んで住宅を5,000万円で買ったとすると、その人は今現在バランスシートを作ってみると、極端な話、借方が土地・建物で時価1,500万円、貸方は借入金で残額が4,000万円になっていて、差引2,500万円の債務超過になっているかもしれません。
 デフレ時代は土地・建物対借入金の比率、キャッシュフローと総資産の比率等をチェックし、全体のバランスを見ることが必要です。企業であれば、バランスシート上に使わないゴルフ会員権等の不良資産があれば、いつ損切りを実行して、早めに健全なバランスシートに直すかの意思決定は経営者にとって大事な仕事です。
 将来が必ずしも過去の延長線上にない今の時代において、健全な経営をし続ける為に、社長は経営方針を明確に従業員、取引先、仕入先、金融機関の人に伝え続けましょう。インフレの時代と同じ考えをするのではなく、経営計画を作成し、総資産の削減に努め、目の前にあるデフレ時代に対応できる強い経営体質を着実に作り上げていきましょう。


税理士 大津留廣和

顧客の創造

情報ネットワーク2003年7月表紙より

 昭和38年に中小企業基本法が成立しました。
その内容は企業間の格差是正を目的としていました。
 結果として近代化促進・構造改善がおこなわれ、業界全体の構造調整(護送船団方式、業界横並び)が進みました。時代が変わり、平成11年には中小企業基本法大改正が起こりました。
その内容は新事業の創業支援・経営革新支援が目的であり、結果として個別企業の改革支援(格差拡大、差別化)を促進しようとしています。
 すなわち長く続いた高度成長時代においては、売上は創造するものではなく、黙っていても増加していきました。このような時代では仕事をいかにこなすか、すなわち、標準化や効率化が重点テーマでした。しかし時代が変わり、まさに顧客の創造が必要とされる時代が来たのです。そのことに対応する為に、自社の経理を自計化し、経営計画の作成とチェックを習慣化させましょう。
 社長自らの心の中にある気づきを得る為に

税理士 大津留廣和

戦略を考える

情報ネットワーク2003年6月表紙より

 今現在、非常に業績の良い会社でも、土地の個格がバブルのピークから70%以上も下落した資産デフレが止まらない状態が続いているため、保有資産価値の減少が止まらず、会社によっては債務超過に陥るリスクも出ています。
このため会社は、本来の営業で得た現預金等(キャッシュフロー)を、設備投資等の前向きな投資に向けることを躊躇して、借入金などの債務返済に振り向けているのが現実かもしれません。
このように過剰債務を心配する必要のない会社でも、資産価格下落が続き将来見通しの不確実性が大きくなればなるはど、設備投資等を見送ることが最適な戦略になっている感じがします。
このような戦略では世の中、元気が出ないのは当然かもしれません。本当の戦略とは会社がわくわくすること、やりたいことを最優先にすることから始まります。

 これから戦略がある企業と、戦略がない企業では完全な2極化が起こりはじめるでしょう。

  戦略がある企業は、活気や熱気がいっぱいになります。
  戦略がない企業は、資金繰りに走りまわる結果になるかもしれません。
  戦略がある企業は、将来を予測して先手を打ち続けるでしょう。
  戦略がない企業は、日常業務に追われて、気づいたら時には崖っぷちに立たされているかもしれません。

 いままで、日本の10人未満の中小企業は戦略を持っていなかったと言われています。一度自社の強い分野を慎重に選択して、経営資源を投入してみましょう。

税理士 大津留廣和

中小企業における直接金融

情報ネットワーク2003年5月表紙より

 中小企業の資金調達は、今までは銀行からの借入で調達する間接金融が中心でした。しかしバブルが崩壊して12年間も地価が下がり続けていると、間接金融だけに頼ることは、物的担保粋が不足し、資金繰を悪化させています。そのため外部資金の調達方法として、企業が株式や社債を発行し投資家から投資してもらう直接金融が注目されています。
しかしほとんどの中小企業ではそんなに簡単には直接金融で資金を調達することはできないと考えられていましたが、最近では、限られた少数の投資家を対象に資金調達を行う少人数私募債を発行する企業が現れてきました。

 少人数私募債は、株式会社が発行する社債の一種で、50名未満の縁故者を対象に社債の引き受けを募集する、中小企業にとって非常に便利な資金調達法です。
企業側においては、社債は物的担保なしに資金を調達でき、また据置期間の長い借入金で元本返済が一括のため自己資金的に使えます。
投資家側においては、預貯金よりも有利な利率で資金が運用でき、なおかつ社債利息が20%の源泉分離課税のため、高額所得者にとっては税制上有利になります。
 中小企業の経営者は自分の事業を成長発展させ、お客さまや取引先に対して信頼感をより強いものにして、その結果として社会的ステータスを上げることができます。
 一度検討に値する資金調達方法です。

税理士 大津留廣和

デフレは経営を見直すチャンス

情報ネットワーク2003年4月表紙より

 みんなが心配しているデフレ経済を土地の評価額からチェックしてみると凄い結果に気づきました。
 六大都市市街地価格の平均価格を昭和30年に1坪6,000円の価値があったと仮定すると、平成12年にはその土地が1坪1,000,000月になり、バブルのピーク時の平成12年9月には1坪1,051,000円になりました。この期間に土地の価値はまさに約175倍になったということです。
 しかしバブルが崩壊以降は今度は逆に下がり続け、平成14年9月には1坪304,000円になっております。価値がピーク時から約71.1%吹っ飛んだ計算になります。そして都心の一部を除いてまだ下がり続けている感じすらします。これだけはやく土地の価格が下がると、土地本位制で安心して事業を行なっていた企業も担保価値がなくなってしまいました。まさに凄いことが進行しています。

土地価格指数表(財団法人不動産研究所調)
(六大都市市街地価格全用途平均)

年 次 指 数
昭和30年3月 0.6
昭和40年3月 6.5
昭和50年3月 18.9
昭和60年3月 33.6
平成2年3月 100.0
平成2年9月 105.1
平成14年3月 30.4
仮 定
坪単価
昭和30年3月 6,000
昭和40年3月 64,700
昭和50年3月 189,000
昭和60年3月 336,000
平成2年3月 1,000,000
平成2年9月 1,051,000
平成14年3月 304,000

現実を直視し、デフレ時代が今後も続いてもいい経営体制をはやく作る必要があります。
 売上至上主義から抜け出し、粗利益を上げる努力をし、粗利益対人件費比率をチェックし、総資産回転率を上げる努力を今まで以上に行なう必要があります。
 月次決算の大切さを再確認しましょう。

税理士 大津留廣和

テープを聞こう(講演会で刺激を受けよう)

情報ネットワーク2003年3月表紙より

 日本は今、かって経験したことのない難しい時代に直面しています。
戦後の大成功は、我が国を飛躍的に発展させ、世界の大国へと導きましたが、国際化、少子高齢化という構造変化をもたらし、昭和恐慌以来70年ぶりに経験するデフレ不況の中にいます。
でも人間とは本来怠け者ですから、時代が変わったとしても放っておくと何もしないものだと思います。ところが、願望や目標を持つと急に頑張るようになると思います。

(1)本を読む
(2)講演会で刺激を受ける
(3)テープを聞く

本を読む習慣をつけると確かに賢くなり、多くの刺激を受けると同時に時代感覚・現状認識をきちんと身に付けられるようになる感じがします。
またちょっとした空き時間が有効に使えます。
講演会に出席して刺激を受けることは本を読むこととは違った意味でもっと刺激を受けます。講演者自身が培ったノウハウや気づきを聞かせてもらうことにより、より多くのノウハウや考え方をもらえます。
そしてどうしても時間のない方はテープを聞くことが講演会に行くのと同じように効果があります。またテープを聞くことの良い所はどうしても人間は考え方が後ろ向きになりがちですが、テープを聞いていると常に前向きに物事を見る習慣ができる感じがします。
今の時代をチャンスに変えるためにも色々な良いと言われてことを試みたいものです。

税理士 大津留廣和

平成15年度税制改正案が公表

情報ネットワーク2003年2月表紙より

 平成15年度税制改正では、今の時代の困難に税制面で応えること、即ち、国民の現在と将来不安を最小限に抑え、安心できる公共サービスを提供できること、将来の財政の健全性を維持しつつ、新たな飛躍に応え得る財政体質を目指すことを重視して下記のような制度改正が行われるようです。(主なもの)


(1)中小企業が30万円未満の減価償却資産の取得をした場合に全額損金算入(即時償却)を認める。(現行10万円未満)(中小企業税制)
(2)相続時精算課税制度(仮称)を創設。贈与税の非課税枠を従来(110万円の非課税枠)の分とは別に2,500万円(住宅取得資金の贈与の非課税枠を3,500万円)にする。
(3)相続税・贈与税の最高税率を50%に引き下げる。(相続税・贈与税)
消費税については免税事業者の適用上限を年間売上高1,000万円以下(現行3,000万円)に引き下げる。
簡易課税制度の適用上限を5,000万円(現行2億円)に引き下げる。
(平成16年4月1日以後の開始の課税期間から適用する)

 税制が変わるということは、この改正をきっかけに世の中が動き出すことだと思います。
それゆに経営者がビジネスプランを作成し、会計システムを見直しすることにより、やる気と活動を回復し、今現在のビジネスチャンスの時代を活かしていただければと思います。

税理士 大津留廣和

あけましておめでとうございます。

情報ネットワーク2003年1月表紙より

 私自身、昭和61年9月都営新宿線瑞江駅が開通した同年11月に税理士事務所を開業してから今年で17年目を迎えました。
 瑞江駅の開通以前の瑞江地域は蓮畑や畑が多い土地でした。
 瑞江駅が開通した当時は駅ビルぐらいしかビルらしいビルもありませんでした。それが今現在は銀行が駅前には6行もあり、町並みも17年前とは比べようにならないはど変わりました。鉄道の駅ができることがこんなにも地域を変えるものかと感じています。
 世の中に目を向けると景気が長期低迷し、デフレ現象が進行しています。
 しかし商法(日本の経済システムの要にある制度)が改正され、会計のシステムも変わりました。このことは企業経営を変え、世の中を変えるきっかけになると思っています。
 このことと同時に日本銀行が踏み切った金融緩和策がいずれどこかでお金を動かし景気が回復に向かう可能性が高いと思っています。
 もしそうであるならば、この不景気の間にしっかり自分を見つめ直す必要がある感じがしてなりません。変化の本質を見る目を育てる為にも、素直な気持ちで知識習得や現状認識をきちんとしたいものです。

税理士 大津留廣和